「似合わせカット」と書くのをやめた。全員が同じことを言う場所で逆を打ち、予約が月16件から41件になった美容室の話
ホットペッパー、食べログ、楽天。こうしたプラットフォームに出しているなら、自分の店は一覧の中の1つとして見られています。
そこで多くの店が、業界で効くとされている言葉を使います。美容室なら「似合わせカット」「あなた史上最高」。正しい訴求です。
ある美容室は、その言葉を捨てました。掲載プランも料金も変えていません。それで月平均16件だった予約が、41件になっています。
変えたのは「お店の売り」とクーポンの文言だけ

この美容室は、ホットペッパービューティーに掲載している平凡な店でした。過去1年間の月平均予約数は16件程度です。
そこで訴求軸を大胆に変えたところ、施策後1年間の月平均予約数は約41件に増えました。2.5倍です。
変えたのは掲載プランでも料金でもありません。「お店の売り」と「クーポンの訴求内容」だけです。
全員が同じことを言う場所では、同じことを言うと消える

一覧に並んだ瞬間、選ぶ基準が変わる
プラットフォーム型のサービスでは、競合が一覧で並びます。同じような訴求をしていると、消費者から見て「どこも同じ」になります。
そうなると、選ぶ基準は価格か、立地か、写真の雰囲気だけになります。中身で選ばれる前に、条件で比べられて終わります。
この店が打ち出したのは「似合わせを捨てる」だった
そこでこの美容室が出したのが、逆張りの訴求です。
似合わせカットは、あなたが自己評価で『いい』と思うヘアスタイル。でも当店は違います。あなたが『こういう人からこう見られたい』を叶えるスタイルをご提案します
さらに、こう問いかけます。
あなたは、自己評価で『いい』と思うヘアスタイルになりたいですか?それとも、好きな人があなたを『可愛い』と思うヘアスタイルになりたいですか?
この訴求が優れているのは、言葉の定義をズラすことで、唯一無二のポジションを作った点です。全員が「似合わせ」と叫ぶ中で、1店舗だけが「似合わせではなく、見られ方デザイン」という別の軸を出しました。

その結果…
月平均16件だった予約は、約41件になりました。掲載プランも料金も変えていません。
【独自考察】否定していないのに、比較の相手が消える
競合を悪く言わずに、外している
注目したいのは、この訴求が他店を否定していないことです。「似合わせは良くない」とは一言も言っていません。
言っているのは、似合わせとは自己評価の話であり、うちが扱うのは他者からの見られ方だ、ということだけです。それでも、読んだ人の頭の中では2つが別のものに分かれます。分かれた瞬間、価格で比べる相手ではなくなります。

選ぶ人を減らしているのに、予約は増えた
この訴求は、間口を広げていません。むしろ「自己評価で満足したい人には役立てないかもしれない」と、はっきり書いています。
それでも予約は2.5倍になりました。一覧の中で埋もれていた状態から、特定の一人に向けて名指しした状態へ変わったからだと考えられます。全員に向けた言葉は、誰の目にも留まりません。
逆張りと、奇をてらうことは違う
ひとつ注意しておきたいのは、目立てば何でもいいわけではないことです。
この店の訴求が機能したのは、「見られ方をデザインする」という軸が、実際に提供している技術の説明になっているからです。カウンセリングで誰にどう見られたいかを聞き、そこから逆算してスタイルを決める。訴求と中身が一致しています。
中身が伴わないまま言葉だけ変えると、来店時に落差が生まれます。予約が増えたぶんだけ、口コミで戻ってきます。逆張りで探すのは新しい言葉ではなく、すでにやっているのに誰も言語化していない部分です。
【応用編】逆張りの訴求軸を作る4ステップ

1. 競合20〜30店の訴求をリサーチする
同じエリア、同じ価格帯の競合をプラットフォーム上で20〜30店チェックし、使っている訴求ワード、キャッチコピー、クーポン内容を全てリストアップします。
そこから「みんなが言っていること」を抽出します。美容室なら「似合わせ」「あなた史上最高」がそれにあたりました。
2. その反対、または別の角度を考える
みんなが言っていることの反対、あるいは同じ価値を別の角度から表現できないかを考えます。この店は「似合わせ(自己評価)」の対極として「見られ方デザイン(他者評価)」を置きました。
3. 「これは他と違う」と伝わる言葉にする
曖昧な表現では伝わりません。読んだ人がその場で違いを理解できる言葉にします。問いかけの形にすると、違いが自分の話として入ってきます。
4. 店舗ページとクーポンを、新しい軸で統一する
ホットペッパーなら、店舗トップの「当店の売り」と、各クーポンのタイトル・説明文を全て新しい軸に揃えます。1箇所だけ変えても、一覧の中では気づかれません。
他業種での例
整体院なら「痛み改善」ではなく「月曜朝に疲れを残さない週末メンテナンス」。飲食店なら「美味しい料理」ではなく「SNS映えゼロ、味だけ勝負の隠れ家」。学習塾なら「成績アップ」ではなく「勉強嫌いを克服する習慣化メソッド」。
いずれも、提供しているものは変えていません。言い方の軸を1つ動かしただけです。
なお、この打ち手は競合が多い場所ほど効きます。並んでいる店が少なければ、そもそも埋もれないからです。一覧に何十件も並ぶ媒体に出しているなら、優先度は高くなります。
その一覧の中で、自分の店は何と書いてあるか
予約が伸びないとき、掲載プランを上げるのが自然な選択です。実際、露出は増えます。
ただ、この店が変えたのはプランではありませんでした。全員が使っている言葉を捨てて、別の軸を1つ置いた。それだけです。
競合と並べて表示されたとき、自分の店の説明文は、隣の店と違うことを言っているでしょうか。