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値上げをせずに客単価を100円上げた。「あと50円で特大」という選択肢を1つ足しただけのラーメン屋の話

客単価を上げたい。でも値上げをすれば客が離れるかもしれない。この二択で止まっている店は多いはずです。

あるラーメン屋は、そのどちらも選びませんでした。顧客に価格変更を意識させないまま、客単価を100円上げています。

やったのは、メニューに選択肢を1つ足して、価格差を調整しただけです。

価格差を調整しただけで、客単価が100円上がった

選択肢を3つにして価格差を調整し、客単価が100円上がった

実際の価格設定はこうなっています。

並盛:950円
大盛:1,100円(+150円)
特大:1,150円(+50円)

この設定で最も多く注文されるのは、真ん中の大盛(1,100円)です。

人は3択のうち、真ん中を選ぶ

等間隔の価格設定と、価格差を調整した設定

最も安いものは「ケチっぽい」、最も高いものは「贅沢しすぎ」

人間は選択肢が3つあると、無意識に真ん中を選ぶ傾向があります。「松竹梅の法則」あるいは「極端回避性」と呼ばれるものです。

最も安いものは「ケチっぽい」と感じ、最も高いものは「贅沢しすぎ」と感じる。そして真ん中を「ちょうどいい」「無難」と判断します。

重要なのは、価格差のほうだった

ここで効いているのが価格差の設定です。通常の感覚で値付けすると、こうなるはずです。

並盛:950円/大盛:1,050円(+100円)/特大:1,150円(+100円)

等間隔です。ただこれでは、真ん中の大盛が1,050円になってしまいます。そこで価格差を調整しました。

並盛から大盛への差額は+150円(やや大きい)。大盛から特大への差額は+50円(非常に小さい)。

ラーメン屋のカウンターと、丼を置く手元

特大は、売るために置いていない

すると、顧客の頭の中ではこう動きます。

大盛が1,100円か、ちょっと高いな。でも、あと50円出せば特大になるのか。それなら…いや待てよ、特大は食べきれないかもしれない。やっぱり大盛でいいか。

特大の存在が、大盛を選ぶ理由になっています。もし特大がなければ、「並盛950円と大盛1,100円、150円差は大きいな。並盛でいいか」となるでしょう。もっと高い選択肢があることで、大盛が相対的にお得に見えます。

その結果…

顧客に価格変更を意識させることなく、客単価は100円上がりました。売上が向上しただけでなく、顧客満足度も維持できています。

【独自考察】値上げは、価格を上げなくても成立する

選ばれない選択肢が、仕事をしている

この事例でおもしろいのは、特大がほとんど売れなくても構わないという点です。

特大の役割は、それ自体が売れることではありません。大盛を「上から2番目」ではなく「真ん中」に変えることです。並盛と大盛の2択では大盛が上限になりますが、特大を置いた瞬間に大盛は中間になります。

メニューに載っている品目の全てが、売るために存在しているとは限りません。他の品を選ばせるために置く品があるという見方は、そのまま自社の商品構成にも当てはめられます。

特大は、売るために置いているわけではない

やりすぎると、見抜かれる

ひとつ注意しておきたいのは、これが「量に対して妥当な価格」の範囲で成立していることです。

特大の量が大盛とほとんど変わらないのに+50円であれば、顧客は次から選択肢そのものを信用しなくなります。真ん中に誘導する設計は、どの選択肢を選んでも損はないという前提の上で機能します。

元ネタでも、顧客満足度が維持できたことが成果として並べて書かれています。単価だけを見て設計すると、この部分が抜けます。

実務的には、上に置く選択肢の原価も先に確認しておく必要があります。差額+50円に対して原価が80円かかるなら、真ん中に誘導するどころか、売れるほど利益が減ります。誘導の設計と、利益の設計は別に検算しておくことです。

【応用編】真ん中に誘導する5ステップ

真ん中に誘導する価格設計の手順

1. 本当に売りたい価格を決める

自社が理想とする客単価、または商品価格を先に決めます。これが真ん中になります。このラーメン屋なら大盛1,100円です。

2. 真ん中より安い選択肢を置く

少し価格を下げた選択肢を用意します。ただし価格差はやや大きめ(100〜200円程度)にして、「この差額なら真ん中でもいいかな」と思わせます。

3. 真ん中より高い選択肢を置く

わずかな価格差(30〜100円程度)で、少しグレードアップした選択肢を用意します。「あと少しでこっちになるなら…でもやっぱり真ん中でいいか」と思わせるのがポイントです。

4. 3つを横並びで見せる

メニューやLPで、必ず3つを並べて提示します。比較しやすいレイアウトにすることで、真ん中が選ばれやすくなります。

5. 結果を測って、価格差を微調整する

実際の注文データを見て、真ん中に誘導できているかを確認します。安いほうに偏るなら真ん中との差を縮める。高いほうに偏るなら真ん中との差を広げる。設計して終わりではありません。

他業種での例

美容室のカット料金なら、通常カット3,500円/カット+トリートメント4,800円(+1,300円)/カット+トリートメント+ヘッドスパ5,300円(+500円)。コンサルプランなら、ベーシック30万円/スタンダード50万円(+20万円)/プレミアム55万円(+5万円)。サブスクなら、ライト月額980円/スタンダード月額1,980円(+1,000円)/プロ月額2,480円(+500円)。

いずれも、真ん中の1つ上を小さな差額で置いています。

そのメニューは、どれを選ばせたいのか

単価を上げたいとき、価格そのものを上げるのが自然な発想です。実際、それが必要な場面もあります。

ただ、この店が変えたのは価格ではありませんでした。選択肢の並べ方と、その間隔を変えた。それだけです。

自社のメニューや料金表は、選んでほしいものが真ん中に来ているでしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

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