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モバイルオーダーで浮いた人件費を、利益にせずスタッフに回した。客単価が平均310円上がった飲食店の話

モバイルオーダーを入れると、注文を取りに行く仕事がなくなります。人が1人減らせる。人件費が下がる。導入の理由として、これ以上わかりやすいものはありません。

ただ、その裏で起きやすい問題があります。スタッフとお客さんが話す機会が減り、客単価が下がることです。

ある飲食店は、モバイルオーダーを導入したあと、逆に客単価を上げました。注文の仕組みを工夫したのではありません。変えたのは、浮いた人件費の行き先でした。

モバイルオーダーの導入後、客単価が平均310円上がった

浮いた人件費をインセンティブに回し、客単価が平均310円アップした

この店は、モバイルオーダー導入前は5人で運営していました。導入後は4人体制に変更し、1日あたり約1万円、月30万円の人件費が浮きました。

この30万円を、利益として残すのではなく、スタッフへの「売上連動型インセンティブ制度」の原資にしました。

結果として、客単価は平均310円アップしています。1日200人の来客で計算すると、1日6万円、月180万円の売上増加です。元ネタはこれを「削減した月30万円の人件費が、180万円の売上増加に化けた」と表現しています。

浮いたお金を「節約」と見るか、「原資」と見るか

浮いた人件費を利益に計上する店と、スタッフへのインセンティブに回す店

モバイルオーダーで客単価が下がる理由は、はっきりしています。

注文を取りに行く必要がなくなると、スタッフがお客さんと接触できるのは「料理を提供する瞬間」だけになります。注文を受けるときの「こちらもいかがですか?」が言えなくなり、追加注文が生まれにくくなるのです。

それでも多くの店舗は、浮いた人件費を「コスト削減の恩恵」として、そのまま利益に計上しようとします。元ネタは、これを短期的な節約であり、客単価低下という長期的な損失を見落としていると指摘しています。

この店がとった考え方は逆でした。

削減したコストを人への投資に変換することで、売上増加という大きなリターンを生み出す

人は明確な報酬があれば、自然と行動が変わります。「頑張れば給料が上がる」という仕組みが整えば、スタッフは自発的に積極的なセールストークに取り組みます。浮いたお金を、その仕組みの材料にしたわけです。

提供と片付け。残った2回の接点に報酬をつけた

インセンティブの中身はシンプルです。スタッフが料理を提供する際や片付けの際に積極的にセールストークを行い、その結果として上がった売上に連動してインセンティブを支給します。

金額の設計も具体的です。月給25万円のスタッフが、最大で月10万円のボーナスを得られる仕組みにしました。これでスタッフのモチベーションは大幅に向上しています。

ポイントは2つあります。1つは、インセンティブの原資に「モバイルオーダー導入で削減できた人件費」を充てているため、店にとって新たなコスト負担が発生しないこと。もう1つは、セールストークのタイミングを「提供時」と「片付け時」の2つに決めていることです。

テーブルに料理を運ぶスタッフの手元

その結果…

客単価は平均310円アップしました。1日200人の来客で計算すると、売上は1日6万円、月180万円の増加です。月30万円の人件費削減を利益にとどめず、スタッフに回したことで、削減額の何倍もの売上増加につながっています。

【独自考察】仕組みで減った会話は、仕組みで取り戻す

接点は「減った」のではなく「絞られた」

モバイルオーダーの話になると、接客が減ることばかりが語られます。ただ、この事例を見ると、接点はゼロになったわけではありません。料理を運ぶとき、皿を下げるとき。お客さんの前に立つ場面は、まだ2回残っています。

しかも、提供の瞬間は料理を目の前にしたタイミングです。片付けの瞬間は、お客さんが次に何を頼むか考えているタイミングかもしれません。注文を取りに行くよりも、むしろ話しかけやすい場面だと考えています。問題は、その場面で一言を足す理由が、スタッフの側に無かったことです。

削減したコストを人への投資に変換することで、売上増加という大きなリターンを生み出す

「声をかけて」とお願いするより、報酬の形にする

「もっとおすすめしてください」と口頭でお願いするやり方もあります。ただそれでは、続くかどうかはスタッフの気持ち次第になります。

この店は、お願いではなく給与の仕組みに組み込みました。しかも月給25万円に対して最大月10万円という上限で、スタッフから見て本気で狙う意味のある設計です。元ネタの言う「人は明確な報酬があれば自然と行動が変わります」を、そのまま形にしたものだと考えています。

削った分を、どこに戻すかまで決めておく

モバイルオーダーに限らず、何かを自動化すると、浮いたお金と一緒に「人が担っていた何か」も消えます。この事例で消えかけたのは、注文時の一言でした。

広告の運用にも、同じ問いがあると考えています。自動化で手間やコストが減ったとき、浮いた分をそのまま利益と見なすのか、自動化で失ったものを取り戻すために使うのか。削減の判断と、再投資の判断はセットで考えるべきだと考えています。

一方で、売上連動の報酬は、強く勧めすぎる接客につながる可能性もあります。提供時と片付け時の一言が、お客さんにとって心地よい提案にとどまっているか。制度を入れたあとも、そこは店側が見ておく必要があると考えています。

【応用編】始める前に、自分の店に聞いておきたい3つのこと

削減額の把握、インセンティブ設計、セールストークの実践の3つの手順

元ネタが示す手順は3つです。削減できた人件費の金額を把握する。削減分を原資にした売上連動インセンティブ制度を設計する。提供・片付け時のセールストークをスタッフに実践してもらう。これを、自分の店に向けた問いに置き換えてみます。

何を入れて、いくら浮いたか、数字で言えるか

モバイルオーダーである必要はありません。小売店なら、セルフレジの導入で浮いた人件費が同じ原資になります。まずはその金額を、1日あたり・月あたりで把握することから始まります。この店の場合は1日約1万円、月30万円でした。金額がわからなければ、原資の大きさも決められません。

残った接点は、どの場面か

この店では「提供時」と「片付け時」でした。業種によって、残る接点は違います。美容サロンなら、施術中の会話がそれにあたります。そこでオプションを提案し、成約率に応じた報奨金を設けるという形が考えられます。自動化したあとに、まだ人がお客さんの前に立つ場面はどこか。そこに一言を足す理由を作ります。

その報酬は、スタッフが本気で狙いたくなる額か

この店では、月給25万円に対して最大月10万円という設計でした。原資はあくまで削減できた人件費の範囲です。そのうえで、スタッフから見て「頑張れば給料が上がる」と実感できる額になっているか。居酒屋やファミレスのように、同じ形をそのまま当てはめやすい業態もあります。

その削減は、何を一緒に削っていないか

コスト削減は、数字がすぐに見えます。人が1人減れば、その月から人件費が下がります。一方で、客単価が少しずつ下がっていくことには気づきにくいものです。

この飲食店が変えたのは、注文の仕組みではありませんでした。浮いた30万円を利益にせず、スタッフの一言に報酬をつけた。それだけで、客単価は平均310円上がりました。

最近の効率化で浮いたお金は、いまどこに置かれているでしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

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