量販店と価格で戦わず、飲食店に絞った。FAXで無料点検を案内し、夫婦2人で年商1億円を超えたエアコン工事会社の話
夫婦2人で営む会社の売上には、限界がある。通常、二人体制ではそう考えられています。
ところが、夫婦二人だけで経営するエアコン工事会社が、年商1億円を突破しました。
使ったのは、目新しい手法ではありません。むしろ古いと思われがちなFAX DMです。鍵になったのは、FAXという届け方と、送る相手の組み合わせでした。
夫婦2人だけのエアコン工事会社が、年商1億円を超えた

二人体制では売上に限界がある、という常識を、この会社は戦略的な集客方法で打ち破りました。
鍵になったのは、「ターゲット選定」と「ニッチな集客チャネル」の組み合わせです。どちらか片方ではなく、2つが噛み合ったことに意味があります。
家庭のエアコンと、飲食店のエアコンは別物

一般家庭を狙うと、量販店と値段で比べられる
エアコン工事会社が一般家庭をターゲットにすると、家電量販店との価格競争に直面します。エアコン本体から設置、クリーニングまで、あらゆる場面で量販店の方が安いため、どうしても価格で負けてしまいます。
そこでこの会社は「対法人」、特に「飲食店」に特化することを決断しました。
火を使う店のエアコンは、休めない
飲食店がエアコンに投資する理由は、一般家庭とは全く異なります。
飲食店では火を使うため、室内が非常に暑くなります。お客様の快適さを保つために、エアコンをフル稼働させる必要があります。場合によっては24時間、それが何週間、何ヶ月も続きます。この過酷な環境では、エアコンの寿命は通常よりも大幅に短くなり、故障のリスクも高まります。
止まった日が、営業できない日になる
さらに重要なのは「緊急性」です。真夏にエアコンが壊れれば、お客様を受け入れられず、営業ができなくなります。真冬に故障しても同じです。
つまり飲食店にとって、エアコンの修理・交換は「価格交渉の余地がない、必須の投資」です。他の業界より投資の頻度が高く、緊急対応も多い。だからこそ、良い顧客になり得ます。
飲食店には、FAXを見る習慣が残っている
もう1つの鍵が、なぜFAX DMだったのかです。
飲食業界では、食材の発注など、いまだにFAXで業務を行う文化が根強く残っています。飲食店は「FAXを確認する習慣がある業種」であり、FAX DMは他の業種よりも高い到達率が見込めます。
無料点検から「かかりつけ医」になるまでの4段階
1段階目は、FAX DMでの無料点検のご案内です。夏が本格化する前のタイミングで、次のメッセージを送りました。
去年の夏、エアコンが一度でも止まりませんでしたか?今年の猛暑に備えて、無料の点検をしてみませんか?
飲食店が心のどこかで抱えている不安に、まっすぐ触れる文面です。
2段階目は、点検での正直な診断です。実際に点検に来た飲食店に対して、正直な点検結果を伝えます。たとえば、こういう伝え方です。
本体は大丈夫ですが、室外機がほぼ限界です。今年の猛暑日に日差しが直当たりしたら止まる可能性があります。室外機だけの交換をお勧めします
過度な営業ではなく、事実に基づいたアドバイスをします。
3段階目は、メルマガ・ニュースレターでの継続フォローです。一度の接触で終わらせず、定期的に送って記憶に残り続けるようにします。内容は大したものでなくても構いません。大事なのは「存在を忘れられない」ことです。
4段階目が、「かかりつけ医」ポジションの確立です。継続的なフォローによって、何か問題が起きたとき、飲食店は自然とこの会社に電話をかけるようになります。他社ではなく「いつも診てくれるあの会社」という信頼関係が生まれます。

その結果…
飲食店に絞り、FAX DMで無料点検を届け、フォローを続けて「かかりつけ医」になる。この組み合わせで、夫婦二人だけのエアコン工事会社が年商1億円を突破しました。
【独自考察】小さな会社ほど、戦う場所と届け方を先に決める
「交換は室外機だけでいい」と言える点検が、信頼になる
無料点検は、よくある手法です。そして、受ける側の中には身構える人もいます。点検の後に高い見積もりが出てくるのではないか、と。
この事例の診断例で目を引くのは、本体は大丈夫だと先に言っていることです。そのうえで、交換は室外機だけでいいと伝えています。売る側から見れば、もっと大きな工事を勧めることもできそうな場面です。
必要以上に勧めない診断は、その場の売上を小さくします。ただ、「この会社は必要なことしか言わない」と受け取られれば、次に壊れたとき真っ先に電話がかかってくる理由になります。無料点検の価値は、点検そのものより、正直さを一度見せられることにあると考えています。

媒体は新しさではなく、相手の習慣で選ぶ
FAX DMと聞くと、古い手法だと感じる人も多いと思います。しかしこの事例でFAXが選ばれた理由は、新しいか古いかではありませんでした。相手がふだん何を見ているかです。
飲食店は、食材の発注でFAXを見る習慣があります。日常的に確認している場所に届くので、高い到達率が見込めます。元ネタが「その業界が実際に使うコミュニケーションチャネルを選ぶ」と書いているのは、この点です。
広告の媒体選びでも、基準は同じだと考えています。自分たちが使い慣れている媒体や、話題になっている媒体から考えると、相手の習慣が抜け落ちます。順番は、相手を決めてから、その相手が見ている場所を探す、です。
2人で回るのは、仕事が「呼ばれる形」になっているから
夫婦2人で年商1億円という数字は、営業に人手をかけていては成り立ちにくいはずです。
この事例の4段階を見ると、最初の接点はFAX DMと無料点検、その後はメルマガ・ニュースレターです。最後には、問題が起きた飲食店の側から電話がかかってきます。こちらから売りに行く場面が、段階を追うごとに減っていく設計になっています。限られた人数で売上を伸ばせた理由の1つは、ここにあると考えられます。
【応用編】始める前に、3つのことを決めておく

この手法は、元ネタでは3つのステップにまとめられています。エアコン工事に限らず、設備や工事を扱う会社であれば同じ順番で考えられます。
決めること1. どの業界に絞るか。
ターゲット業界をリサーチし、選びます。この事例で飲食店が選ばれたのは、設備が酷使され、止まると営業できず、価格交渉の余地がないからでした。自社の商材にとって、同じ条件がそろう業界はどこかを探します。
決めること2. その業界に、何で届けるか。
その業界に最適な集客チャネルを選びます。基準は、相手が日常的に確認しているかどうかです。
決めること3. 最初の接点を、何にするか。
無料診断・点検で初回接触をつくります。「お試し」の仕組みがあると、初回接触のハードルは大きく下がります。
元ネタでは、応用例として3つの業種が挙げられています。電気工事会社なら、飲食・宿泊施設向けにFAX DMで無料点検オファーを配信する。ビル管理・メンテナンス会社なら、オフィスビルの設備点検を無料で提案する。内装工事会社なら、飲食店のリノベーション時期を見込んだFAX DMで営業する。
どの例も、3つの決めごとが順番どおりに入っています。そして、点検や提案の後に継続的なフォローを続け、「かかりつけ医」の位置をとることが、安定した継続売上の源泉になります。
その商品を、値段で比べない相手は誰か
少人数の会社が売上を伸ばそうとするとき、人を増やすか、広告を増やすのが自然な発想です。
この会社がやったのは、そのどちらでもありませんでした。値段で比べられない相手を選び、その相手が日常的に見ている場所に、無料点検の案内を届けた。そして、正直な診断とフォローで、呼ばれる会社になった。
自社の商品を「価格交渉の余地がない、必須の投資」として受け取ってくれる業界は、どこにあるでしょうか。