マーケティング 5分で読めます

「ボケ防止」と書くのをやめた。「お金は一切動きません」の一文でチラシの反応が1.8倍になった健康麻雀教室の話

商品の良さを伝えても反応がない。そういうとき、多くの場合は伝え方が足りないと考えます。もっと詳しく、もっと分かりやすく、もっと魅力的に。

しかし、相手が「それはいいですね」と言っているのに申し込まない場合、増やすべきは説明ではありません。その人が申し込まない理由が、別のところに残っています。

高齢者向けの健康麻雀教室は、効果の説明をやめました。代わりに一文だけ足して、チラシの反応を1.8倍にしています。

足したのは「お金は一切動きません」の一文

ヘッドラインを効果効能から『お金は一切動きません』に変更し、チラシの反応が1.8倍になった

健康麻雀は、高齢者を対象にした麻雀教室です。麻雀は頭を使い、指先も動かすため、脳の活性化につながるとされています。

この教室のチラシには、その効果が並んでいました。「ボケ防止」「脳トレ効果」「指先を使う健康法」。書かれていることは正しく、読んだ人も「それはいいですね」と反応します。

それでも1,000枚で1人だった

ところが結果は、1,000枚配って1人来るか来ないか、という水準でした。効果に納得はしてもらえる。それなのに申し込みまで進まない。

そこでヘッドラインを差し替えます。効果の説明をやめ、大きくこう書きました。

お金は一切動きません

この一文で、反応は1.8倍になりました。1万枚で約18人が来場するようになっています。

止めていたのは、効果への疑いではなかった

効果効能を伝えても買わない相手には、効果の裏側に残っている『買わない理由』を潰す必要がある

効果は、すでに知られている

麻雀が頭を使うことは、読み手もすでに知っています。脳の活性化につながるという話も、目新しくはありません。

知っていることを繰り返し説明されても、行動は変わりません。「それはいいですね」と言いながら申し込まない状態は、効果が伝わっていないのではなく、効果が伝わってもなお別の何かが残っている状態です。

麻雀と聞いて浮かぶのは、賭け麻雀だった

では、その別の何かとは何か。この教室が立てた仮説は「お金」でした。

麻雀には、賭け事のイメージが根強く残っています。特に年齢が上の層ほどその印象は強く、麻雀と聞けば賭け麻雀を思い浮かべます。すると「怪しいのではないか」「お金を取られるのではないか」という不安が先に立ちます。

「お金は一切動きません」という一文は、効果の説明ではありません。不安の打ち消しです。この一言で「自分が心配していたことは関係ないんだ」と分かり、申し込みのハードルが一気に下がりました。

畳敷きの広間と、湯呑みを持つ手元

その結果…

効果効能を一切増やさないまま、反応は1.8倍になりました。教室の内容も、価格も、配布方法も変えていません。変えたのは、不安に触れる一文を足したことだけです。

【独自考察】「いいですね」は、買う理由にはならない

同意と行動は別のもの

この事例で最も重要だと考えたのは、顧客の同意を成果と取り違えないことです。

「それはいいですね」という反応は、売り手にとって心地よく、手応えとして受け取ってしまいます。しかしそれは提示した価値に同意しただけで、行動を妨げているものが消えた合図ではありません。

同意されているのに動かないなら、追加すべきは価値の説明ではなく、まだ触れていない不安の方です。ここを取り違えると、正しい説明を厚くするほど反応が鈍る、という状態が続きます。

同意は、行動を妨げているものが消えた合図ではない

不安は、たいてい業界のイメージから来る

もうひとつ注目したのは、この教室が潰した不安が、教室自身の問題ではなかった点です。

賭け麻雀のイメージは、この教室が作ったものではありません。業界に長くついてきた印象です。自社に非がない不安ほど、当事者からは見えません。自分たちは健全に運営しているのだから説明する必要はない、と考えてしまうからです。

しかし読み手は、業界のイメージごと目の前の会社を見ています。自社の落ち度ではない不安を、自社の言葉で打ち消す。これができるかどうかが分かれ目になります。

【応用編】「買わない理由」を見つけて潰す4ステップ

同意されているのに買われない現象を観察し、買わない理由を仮説立てし、それを否定する一文をヘッドラインに置く手順

1. 「いいですね」なのに申し込まない場面を探す

商談でも、チラシへの反応でも構いません。価値には同意してもらえるのに成約に至らない場面があれば、そこに買わない理由が隠れています。

2. 業界のイメージから仮説を立てる

自社ではなく業界全体に向けられている不安を書き出します。お金、勧誘、続けられるか、恥ずかしくないか。顧客に直接聞ければ確実です。

3. その不安を打ち消す一文を、最初に置く

本文の途中や注意書きではなく、ヘッドラインに置きます。健康麻雀が「お金は一切動きません」を最も大きく書いたのは、そこを読ませたかったからです。

4. 不安が消えた状態で、あらためて効果を伝える

効果の説明を捨てる必要はありません。順番の問題です。不安が消えてから聞く効果は、素直に受け取ってもらえます。

他業種での例

高額のコンサルティングなら「途中解約できます」で価格の不安を。オンライン講座なら「専門知識は不要です」で難易度の不安を。トレーニングジムなら「無理な勧誘は一切ありません」で営業への警戒心を。

どれも効果の話ではなく、足を止めていたものを名指しで消しています。

説明を足す前に、消すものがないか

反応が出ないとき、伝え方が足りないと考えるのは自然です。しかし相手が価値に同意しているなら、説明はもう足りています。

この健康麻雀教室が示していたのは、読み手が黙って抱えていた不安に、誰も触れていなかったということでした。

自社の商品を前にして、お客さんが口に出さずに心配していることは何でしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

自社に当てはめると、どこから手を付けるべきか。

まずは現状をご相談ください

広告運用・採用マーケティングの両面から、御社の状況に合わせた打ち手をご提案します。

無料で相談する