広告にわざと誤字を20箇所入れた。読者に間違い探しをさせて売上189万円・過去最大の1.6倍を記録したペットショップの話
広告を作るとき、私たちは中身に時間をかけます。何を伝えるか、どう見せるか、どの順番で読ませるか。
ただ、その前提として置いている「読んでもらえる」という条件は、たいてい満たされていません。どれだけ良い内容でも、読まれなければ存在していないのと同じです。
あるペットショップは、内容を良くするのではなく、読ませることそのものを設計しました。方法は、広告にわざと誤字を20箇所入れることです。
誤字20箇所を仕込んで、売上189万円・過去最大の1.6倍

このペットショップは以前から広告を出していましたが、集客も売上も伸び悩んでいました。そこで向き合ったのが「どうすれば広告をしっかり読んでもらえるか」という問いです。
出した答えが、チラシに意図的な誤字脱字を20箇所散りばめることでした。そしてヘッドラインに、こう明記します。
この広告には誤字脱字が20箇所あります。見つけてチェックを入れ、ご来店時にお持ちください。1箇所につき1%割引、最大20%OFF!
来店客はチラシを持参し、誤字脱字の箇所にチェックを入れて提示します。それで割引が適用される仕組みです。
結果は、1回のキャンペーンで売上189万円。それまでの過去最大の1.6倍でした。
割引が主役ではない。読ませることが主役だった

人は「間違い探し」から目を離せない
この仕掛けが効く理由は、人間が違和感や謎に引き寄せられる性質にあります。
お菓子の蓋の裏や駅弁の掛け紙に、間違い探しが印刷されていることがあります。急いでいても、つい探してしまった経験がある人は多いはずです。ウォーリーを探せも同じ構造です。「どこかに間違いがある」と知らされた瞬間、人は隅から隅まで見に行きます。
仕込む誤字は、自然でなければいけない
誤字の作り方にもコツがあります。たとえば「小型犬」を別の漢字に誤変換しておく。「お待ちしております」から一文字だけ抜いて「お待ちしておます」にする。
わざとらしすぎると、ゲームとして成立しません。ありそうな間違いを選ぶことで、読み手は本気で探し始めます。
割引は、来店の動機づけにすぎない
この手法の本質は、割引キャンペーンではありません。強制的に広告を読ませる仕掛けです。
誤字を全部見つけようとすれば、広告の文章を最初から最後まで読むことになります。商品の説明も、店の特徴も、価格も、すべて目に入ります。割引はそのチラシを持って来店してもらうための動機づけであり、その手前で広告を精読させていることが最大の成果です。

その結果…
商品も価格も変えないまま、1回のキャンペーンで売上189万円、過去最大の1.6倍を記録しました。読ませることに設計を寄せた結果です。
【独自考察】広告の敵は、競合ではなく読み飛ばし
読まれていない広告は、評価すらされていない
この事例で考えたのは、反応が出ない広告の多くは、負けているのではなく、見られてすらいないということです。
内容を比較されて選ばれなかったのなら、改善の余地は中身にあります。しかし読み飛ばされているなら、中身をどれだけ磨いても結果は変わりません。土俵に上がっていないからです。
この会社が優れているのは、その順番を取り違えなかった点です。伝える内容を練り直す前に、読ませる状態を先に作りました。

読み手に仕事を与えると、関与が生まれる
もうひとつは、読み手を受け身にしなかったことです。
通常の広告は、読み手に何も求めません。だから流し読みされます。この広告は「20箇所を見つける」という具体的な仕事を渡しました。作業が発生すると、人は自分から時間を使い、内容に触れていきます。
さらに、見つけた分だけ割引が増える設計なので、読み込むほど自分の得が増えます。丁寧に読むことと、来店する理由が、同じ方向を向いている。ここが巧みな点です。
【応用編】読ませる仕掛けを自社の広告に入れる4ステップ

1. 誤字脱字を10〜20箇所仕込む
誤変換や一文字の脱字など、実際に起こりうる間違いを選びます。数が少なすぎるとゲームになりません。
2. ヘッドラインで「誤字がある」と宣言する
本文の隅に小さく書いても機能しません。最初に、最も大きく書きます。ここを読ませることが仕掛けの起点です。
3. 割引率は利益を圧迫しない範囲で決める
1箇所につき1%、最大20%といった形で上限を決めます。全部見つけられても成り立つ設計にしておきます。
4. 持参を条件にする
チラシを持ってきてもらうことで、割引の適用と来店が同時に成立します。手元に残す理由にもなります。
他業種での例
アパレル店なら新作チラシに仕込んで来店割引に。飲食店ならメニュー表やSNS投稿に入れて正解者に一品サービス。講座ビジネスならセミナー案内のメールに仕込み、発見者に特典を用意する。
業種を選びません。読ませたい文章があるなら、どこでも成立します。
その広告は、そもそも読まれているか
広告の反応が悪いとき、原因は内容にあると考えるのが自然です。写真を変え、コピーを練り、訴求を作り変える。
しかしこのペットショップが変えたのは、内容ではありませんでした。読み飛ばされる広告を、読まずにいられない広告にしただけです。
自社が先週出した広告は、何割の人に最後まで読まれたでしょうか。