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10万円の枕を1ヶ月無料で貸した。原価が数千円だと知っていたから打てたオファーで月700万円を売った寝具店の話

高額な商品ほど、売り手は慎重になります。まず説明を尽くし、納得してもらってから買ってもらう。順番として自然です。

しかし、使えば良さが分かる商品の場合、この順番は遠回りになります。言葉で伝わらないものを、言葉で伝えようとしているからです。

町の小さな寝具店は、説明を尽くすのをやめました。10万円のオーダーメイド枕を、1ヶ月間まるごと無料で貸しています。それで月700万円を売りました。

1ヶ月無料で貸して、単価10万円の枕が月700万円

単価10万円のオーダーメイド枕を1ヶ月無料お試しで提供し、月700万円の売上を達成した

この寝具店は「睡眠診断士のいるお店」というコンセプトを掲げていました。寝心地の良さを売るのではなく、睡眠に障害を抱えている人が安眠できるよう、オーダーメイドの枕を作るお店です。

完全なオーダーメイドのため、価格は10万円ほどになります。通常なら「この枕は良いものです」と説明し、納得してもらってから購入に進みます。

「1ヶ月間、無料でお試しください」

この店が出したオファーは違いました。1ヶ月間、完全無料で試してもらう。それだけです。

睡眠の悩みは深く、毎日のことなので緊急性もあります。ずっと解決したいと思っている。そこに「1ヶ月試せる」と言われれば、試さない理由がありません。無料お試しの希望者が数多く集まりました。

一晩で分かるものを、言葉で説明していた

説明で納得させる販売と、実際に使ってもらって体感させる販売の違い

睡眠の変化は、その日に体で分かる

寝具は、使えばすぐ結果が出る商品です。

それまで布団に入ってから1時間眠れなかった人が、枕を変えたら5分で眠りに落ちる。夜中に目が覚めなくなる。朝起きたときに疲れが残っていない。こうした変化は1ヶ月もあれば劇的に体感できます。

この体験は、どんな説明よりも強い証拠になります。実感した人は「これがないと眠れない」という状態になり、自然に購入へ進みます。

売れなかったらどうするのか

ここで当然の疑問が出ます。10万円の枕を1ヶ月も無料で貸して、買ってもらえなかったらどうするのか。

答えは原価構造にあります。オーダーメイドとはいえ、枕は素材と形状の組み合わせです。既存の素材を組み合わせて作るため、原価は数千円程度で済みます。枕カバーを高級なものにすれば話は別ですが、枕本体にそれほどコストはかかりません。

つまり、10人に1人、20人に1人が購入してくれれば、残りの人に無料で試してもらっても十分な利益が出ます。この店にとって無料お試しは損失ではなく、投資でした。

寝具が並ぶ棚と、枕を確かめる手元

その結果…

単価10万円のオーダーメイド枕で、月700万円を売り上げました。値引きも、追加の広告費もかけていません。変えたのは、説明で売るのをやめて、使ってもらったことだけです。

【独自考察】オファーの強さは、原価を知っているかで決まる

怖くて強いオファーが出せない、という構造

この事例で最も本質的だと考えたのは、強いオファーを妨げているのが売り手の恐怖心だという点です。

実際、この手法を他社に勧めても「そんなものを無料で提供して買ってもらえなかったら損失が大きすぎる」と嫌がられることがほとんどだといいます。数字の問題ではなく、確信の問題です。

自社の原価と利益構造を正確に把握していれば、無料で配っても損しない範囲が見えます。見えていないと、恐怖から条件を弱め、オファーが中途半端になり、結果として反応も落ちます。オファーの強さは、勇気ではなく計算から生まれます。

オファーの強さは、勇気ではなく計算から生まれる

それでも渋る相手には、回数を限る

もうひとつ、実務的な点があります。計算を見せても踏み切れない相手をどう動かすか。

この手法を提案する側の結論は、驚くほど単純です。「騙されたと思って1回だけ試してもらえませんか」と頼む。それ以外に説得する方法はない、というのが現場の実感でした。

理屈で納得しても、恐怖は消えません。消えるのは、1回やってみて結果を見たときだけです。だから説得の目標を「納得させること」ではなく「1回だけ試させること」に置き換える。これは自社で新しい施策を始めるときにも、そのまま使える考え方です。

【応用編】強いお試しオファーを設計する3ステップ

原価と利益構造を把握し、何人に1人売れれば成立するかを計算し、その範囲で最も強いお試しオファーを設計する手順

1. 原価と利益構造を正確に出す

感覚ではなく数字で出します。1個あたりいくらで作れるのか、提供に人件費はどれだけかかるのか。ここが曖昧なままだと、次のステップに進めません。

2. 何人に1人売れれば成立するかを計算する

この寝具店の場合は、10人から20人に1人でした。この数字が出ると、無料で試してもらうことがリスクではなく投資だと分かります。

3. その範囲で最も強いオファーにする

計算で許される限界まで条件を強くします。試着、試飲、試食、試乗、試泊。使えば良さが分かる商品なら、使ってもらうことが最短距離です。

他業種での例

眼鏡店ならオーダーメイド眼鏡を1週間無料試着。マットレスメーカーなら高級マットレスを1ヶ月無料トライアル。自動車ディーラーなら高級車を1週間無料で試乗してもらう。

いずれも、体験すれば差が分かる商品です。逆に、使っても違いが分からない商品では、この手法は成立しません。

説明で伝わらないなら、使ってもらうしかない

高額商品が売れないとき、説明が足りないと考えるのは自然です。資料を厚くし、事例を増やし、話す時間を長くする。

しかしこの寝具店が示していたのは、一晩で分かるものを言葉で伝えようとしていたということでした。使ってもらえば良さが分かると自信があるなら、使ってもらうのが最も早い。

自社の商品は、お客さんに何日使ってもらえれば価値が伝わるでしょうか。そして、その日数を無料で提供したとき、本当に損は出るでしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

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