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「接客・配膳・清掃」と書くのをやめた。仕事内容を1行書き換えただけで応募が2人から16人になった旅館の話

求人票には必ず職種と仕事内容を書きます。ここは様式が決まっているようなもので、どの会社もよく似た書き方になります。

だから、ここで差がつくとは思われていません。条件や給与を見直すほうが先だと考えるのが普通です。

ある宿泊業は、その仕事内容の欄だけを書き換えました。給与も待遇も掲載媒体も変えていません。それで応募が2人から16人になっています。

書き換えたのは1行だけ。応募は2人から16人へ

求人票の仕事内容を書き換え、応募が2人から16人になった

変更前の求人票は、こう書かれていました。

職種:仲居
仕事内容:接客・配膳・清掃

何も間違っていません。実際にやる作業はその通りです。宿泊業の求人票としては、むしろ標準的な書き方でしょう。

変更後

この会社が書き換えた後の文面はこうです。

職種:仲居
仕事内容:ご家族・カップル・友人…10年後も記憶に残る旅の思い出を作るサポートをしていただきます

職種名は変えていません。給与も、勤務時間も、休日も、掲載している媒体も同じです。変えたのは仕事内容の1行だけで、応募は8倍になりました。

作業を並べても、働く自分は想像できない

変更前は作業の列挙、変更後は作業を通して何をやるのかを書いた

求職者が抱えているのは「自分にできるか」という不安

求人票を読む人が知りたいのは、作業の一覧ではありません。自分にもできるだろうか。続けられるだろうか。この2つです。

仕事の中身がはっきり想像できるほど、その不安は薄れます。逆に想像できなければ、条件が良くても応募までは進みません。

「接客・配膳・清掃」で分かるのは、そこまでだった

では「接客・配膳・清掃」と書かれたとき、読み手は何を思い浮かべるでしょうか。

接客とあれば、お客さんが来たら挨拶をするのだろう。配膳とあれば、夕食や朝食を運ぶのだろう。清掃とあれば、掃除をするのだろう。

そこまでです。それ以上でもそれ以下でもありません。そもそも仲居がそういう作業をすることは、書かなくても誰でも分かります。分かりきったことを確認しただけで、応募の判断材料は何も増えていません。

同じ作業を、意味の側から書いた

書き換えた文面は、作業を消したわけではありません。接客も配膳も清掃も、実際にやります。

変わったのは、その作業を通して何をやるのかを書いたことです。家族連れやカップルや友人同士が泊まりに来る。その人たちが10年後に思い出す旅を作る。仲居の仕事はそのサポートである、と定義し直しました。

読み手の中に立ち上がるものが変わります。作業の一覧ではなく、その仕事をしている自分の姿が浮かびます。

旅館の廊下と、茶を注ぐ手元

その結果…

応募は2人から16人へ、8倍になりました。給与も待遇も媒体も、何ひとつ変えていません。

【独自考察】作業だけを書くと、条件でしか比べてもらえない

比較の土俵を自分で決めている

この事例で私が重要だと考えたのは、仕事内容の書き方が比較のされ方まで決めているという点です。

「接客・配膳・清掃」と書けば、読み手は他社の「接客・配膳・清掃」と並べます。作業が同じなら、残る判断材料は時給と勤務地と休日しかありません。条件で選ばれる土俵に、自分から上がっていることになります。

一方「10年後も記憶に残る旅の思い出を作るサポート」と書けば、比較の対象が消えます。同じ言葉を書いている宿がないからです。条件を上げずに応募が8倍になったのは、そもそも条件で比べられなくなったからだと考えられます。

作業が同じなら、残る判断材料は時給と勤務地しかない

「地図に残る仕事」と同じことをしている

同じ構造の有名な例があります。大成建設の「地図に残る仕事」です。

建設の求人でやる作業を書けば、現場工事の施工、資材の運搬、土地の掘削となります。事実として正確です。しかし「地図に残る仕事」と言われたときに伝わるものは、まったく違います。

作業は同じで、言葉だけが違う。それで、その仕事のやりがいや社会的な意味まで届きます。この宿がやったのは、大企業のスローガンと同じことを、求人票の1行でやったということです。

【応用編】仕事内容を書き換える3ステップ

仕事内容を書き直す3つの手順

1. いま書いている作業を、そのまま書き出す

接客、配膳、清掃。あるいは電話対応、データ入力、書類作成。いま求人票に並んでいる言葉を、まず正直に並べます。ここが出発点です。

2. その作業が、誰に何をもたらしているかを考える

配膳は料理を運ぶ作業ですが、運ばれた人にとっては何でしょうか。掃除は部屋を整える作業ですが、その部屋に泊まる人にとっては何でしょうか。受け取る側から見ると、作業は別のものに見えます。

3. 意味の側から書き直す

作業を消す必要はありません。ただし先頭に置くのは意味のほうです。「作業を通して何をやるのか」が伝われば、読み手はその仕事をしている自分を想像できます。

他業種での例

介護施設なら「入浴介助・食事介助・記録」ではなく、その人が最期まで自分らしく暮らせる時間を支える仕事として。学習塾なら「授業・採点・保護者対応」ではなく、進路に迷う子が自分で決められるようになるまで伴走する仕事として。

いずれも、やる作業は1つも変えていません。

その求人票は、何をする仕事だと伝えているか

応募が集まらないとき、時給や休日を見直すのが自然な発想です。実際、それで改善することもあります。

ただこの宿が変えたのは、条件ではありませんでした。分かりきった作業を並べていただけの1行を、その仕事の意味に書き換えた。それだけです。

自社の求人票の仕事内容欄は、読んだ人にどんな姿を想像させているでしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

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