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「アクセスが悪い」を売りにした。弱み2つをコンセプトに変えて年商4.1億から5.8億にしたゴルフ場の話

「うちには特に売りがない」という相談は、業種を問わず出てきます。

特別に優れているわけでもなく、特別に劣っているわけでもない。そうなると顧客は価格や立地といった表面的な条件でしか選べなくなり、結果としてどこも選ばれにくくなります。

ある地方のゴルフ場は、この状態から抜け出しました。使ったのは新しい設備でも値下げでもなく、それまで弱みだと思っていた2つの特徴です。

弱み2つをコンセプトにして、年商4.1億から5.8億へ

アクセスの悪さとコースの難しさをコンセプトに変え、年商が4.1億円から5.8億円へ約1.7億円伸びた

このゴルフ場は集客に苦戦していました。リサーチで分かったのは、2つの事実です。

ひとつは、その地域にあるゴルフ場の中で一番アクセスが悪いこと。主要駅や主要道路から遠い場所にあります。もうひとつは、口コミを追っていくとコースが難しく、初心者向きではないと書かれていたことです。

どちらも、普通なら隠したい特徴です。この2つを軸にコンセプトを作り直した結果、年商は4.1億円から5.8億円へ、約1.7億円伸びました。

打ち出したコンセプト

新しいコンセプトはこうです。

スコア100以下の腕に自信がある人が実力を試しに来る、市内で最も難易度の高い秘境ゴルフ場

キャッチコピーは「自信のある方だけ、ここまで来てください」。挑発的でありながら、対象を明確に絞っています。

短所は、長所の裏返しでしかない

アクセスが悪い=秘境、コースが難しい=腕を試せる場所。アクセスの良いゴルフ場には名乗れない価値になる

アクセスが良い場所には、絶対に名乗れない

「アクセスが悪い」を裏返すと「秘境」になります。ここで重要なのは、アクセスの良いゴルフ場には、この価値を絶対に打ち出せないという点です。

同じことが難易度にも言えます。「コースが難しい」は初心者にとっては欠点ですが、腕に自信がある人、実力を示したい人、もっと挑戦したい人にとっては価値そのものです。そして初心者向けのコースには、この価値を提供できません。

誰もが弱みだと思っているからこそ、それを強みにした瞬間に、誰も真似できない位置が生まれます。

難所に名前をつけて、体験に変えた

コンセプトを決めた後の作り込みも見事です。

バンカーや難所に「あり地獄バンカー」「ネズミ返し」といった個性的な名前をつけ、コース自体をアトラクションのように演出しました。「このバンカーにハマったとき、あなたは抜け出せるか」という見せ方をすれば、難所は障害ではなく体験価値に変わります。

コンセプトを、すべての接点に通した

そして、このコンセプトに基づいてインスタグラムの発信、Googleマップ対策、広告、パンフレットをすべて統一しました。コンセプトはすべての集客活動の軸になります。どこか一箇所だけ変えても効果は出ません。

山あいのコースと、ティーにボールを置く手元

その結果…

腕自慢のゴルファーが全国から集まる流れが生まれ、年商は4.1億円から5.8億円になりました。コースを作り替えたわけでも、アクセスを改善したわけでもありません。

【独自考察】「売りがない」のではなく、弱みを見ないようにしている

隠している特徴のリストが、そのまま候補になる

この事例で最も実務的だと考えたのは、探す場所が決まっているという点です。

「うちには売りがない」と言う会社ほど、強みを探そうとします。しかし強みが見つからないから困っているわけで、同じ場所を掘っても出てきません。

一方、弱みは必ず自覚されています。アクセスが悪い、予約が取りにくい、値段が高い、対応できる数が少ない。隠したくて口にしていないだけで、本人は全部把握しています。そのリストは、そのままコンセプトの候補一覧です。

その特徴を持たない競合には、絶対に名乗れない

尖ると、比較されなくなる

もうひとつは、絞り込みが競争を回避するという点です。

分かりやすい対比があります。「書類申請ならお任せください」と掲げる行政書士は数え切れないほどいます。その中で比較されれば、価格や近さで選ばれるしかありません。しかし「生前相続の遺言書の書き方を教える事務所です」と尖れば、そこを探している人にとっては第一候補になります。

対象は狭くなります。ただ、狭くなった分だけ、その領域では比較の対象から外れます。このゴルフ場も、腕自慢のゴルファーにとっては他に選択肢がない場所になりました。

【応用編】弱みからコンセプトを作る3ステップ

短所・弱みをすべて書き出し、見方を変えると強みになるものを見つけ、そのコンセプトで全施策を統一する手順

1. 短所・弱み・デメリットをすべて書き出す

隠したいこと、言い訳してきたこと、口コミで指摘されたこと。全部並べます。この作業を飛ばして強みを探すと、また同じ結論になります。

2. 「見方を変えると強みになるもの」を選ぶ

判断基準は明確です。その特徴を持たない競合には、絶対に名乗れないかどうか。アクセスの良い店には秘境を名乗れません。この条件を満たすものが、唯一無二のコンセプトになります。

3. すべての接点をそのコンセプトで統一する

ホームページ、SNS、広告、パンフレット、Googleマップ。一箇所だけ変えても伝わりません。決めたコンセプトを軸に、全部を作り直します。

他業種での例

飲食店なら「駅から遠い」を「隠れ家」に変え、非日常を求める客層を取る。学習塾なら「少人数で授業数が少ない」を「徹底的に個別対応」に変える。治療院なら「予約が取りにくい」を「それだけ結果が出る人気院」として希少性に変える。

いずれも、事実は何も変えていません。どちらの面から見せるかを変えているだけです。

売りがないのではなく、まだ裏返していないだけ

差別化を考えるとき、新しい強みを作らなければと考えるのが自然です。設備を入れ、メニューを増やし、価格を下げる。

しかしこのゴルフ場が使ったのは、すでに持っていて、隠したいと思っていた特徴でした。それも、競合が絶対に真似できないという点で、最も強い材料でした。

自社が今いちばん隠したいと思っている短所は何でしょうか。それは、どんな人にとっての価値になるでしょうか。

ADwith株式会社 代表 西川将吾
ADwith株式会社 代表 西川 将吾

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