会社紹介動画をやめた。現場をそのまま撮った「ダサい」動画に変えて採用コストが20分の1になった介護会社の話
採用に動画を使う会社は増えました。作るとなれば、多くはきれいな会社紹介動画になります。
明るい室内、笑顔で話す社員、音楽に乗せた理念の言葉。仕上がりは立派です。
ある介護関連会社も、そういう動画を作っていました。見てもらうための仕掛けもいくつも打ちました。それでも応募は全然集まりませんでした。
動画を切り替えたら、採用コストが20分の1になった

この会社が切り替えたのは「社員の一日密着動画」です。
リアルな介護の現場をそのまま撮っていったので、オシャレでカッコいい動画にはなりませんでした。元ネタの表現を借りれば、むしろダサい動画です。
それで採用コストが20分の1になりました。
求人は「働いたらどうなるか」を想像させたほうが勝つ

きれいな動画で分かるのは、その会社の雰囲気まで
ブランドイメージを伝える動画は、確かにオシャレでカッコいいものです。会社の姿勢や世界観は伝わります。
ただ、見た人の「ここで働きたい」という欲求まで高められるかというと、そこは別の話です。雰囲気は分かっても、自分がその中で何をしている人になるのかは分かりません。
中小企業のイメージ広告が合わないのと、同じ構造
マーケティングでも同じことが言われます。小さな会社がイメージ広告を出しても費用対効果が合わないので、直接反応を取る広告に注力したほうがいい、という考え方です。
求人動画も同じで、イメージ動画は大企業には効果的でも、中小企業には合わないと元ネタでは整理されています。ブランディングで人を集められるだけの認知が、そもそも無いからです。

その結果…
リアルな現場を映したことで「自分がこの会社で働いたらどうなるか」が伝わるようになり、採用コストは20分の1になりました。
【独自考察】見栄えを良くするほど、判断材料は減っていく
整えるという作業は、削るという作業でもある
この事例で私が重要だと考えたのは、きれいに作ることと、判断材料を渡すことが、実は逆を向く場合があるという点です。
動画をきれいに仕上げる工程では、散らかった棚を画面から外し、生活感のある備品を片づけ、うまく話せなかった場面を切ります。整えるほど、現場の情報は消えていきます。
残るのは、どの会社の動画でも成立する映像です。見栄えは上がり、判断材料は減る。応募が集まらない原因が、質の低さではなく情報量の少なさだったとすれば、作り込むほど遠ざかることになります。

見てもらう工夫を足しても、中身が同じなら結果は変わらない
見落としやすいのは、この会社が何もしていなかったわけではないことです。イメージ動画を作ったうえで、見てもらうための仕掛けをいくつも打っていました。それでも応募は集まりませんでした。
再生数を増やす工夫と、見た人を動かす中身は別の問題です。前者をいくら積み上げても、後者が変わらなければ結果は動きません。打ち手が効かないとき、量の不足を疑う前に、届いている中身を疑ったほうが早い場合があります。
この事例で変えたのは配り方ではなく、映っているものそのものでした。
「ダサい」は、狙って作るものではない
誤解しやすいのは、わざと雑に作れば良いという話ではないことです。この会社の動画がダサく見えるのは、現場をそのまま撮った結果であって、目的ではありません。
基準は見た目ではなく、働いたらどうなるかを想像させられるかどうか。その基準で撮ると、たまたま見栄えは良くならない。順番はそちらです。
【応用編】リアルを切り取る動画の作り方3ステップ

1. 判断の基準を「かっこよさ」から入れ替える
制作を頼むとき、あるいは自社で撮るときに、何を良しとするかを先に決めます。基準は「オシャレでカッコいいか」ではなく、「その会社で働いたらどうなるかをイメージさせられるか」です。
この一文を制作会社と共有していないと、納品物は自動的にきれいな動画になります。
2. 社員の一日を、そのまま追う
出勤から退勤までを順番に撮ります。朝の申し送り、実際の作業、休憩、記録、片づけ。特別な日ではなく、普通の一日を撮るほうが効きます。
応募する人が知りたいのは、いちばん良かった日ではなく、来週の火曜日に自分が何をしているかだからです。
誰を撮るかも決めておきます。役職者ではなく、入社して1〜2年の社員のほうが、応募者は自分を重ねやすくなります。いま応募を考えている人が、数か月後になっている姿がそこにあるからです。
3. 整えすぎない
現場を片づけてから撮ると、見えていたはずの情報が消えます。危険な場所や個人情報は当然伏せるとして、それ以外はそのまま映すことが判断材料になります。
言葉が詰まる場面も、無理に撮り直さないほうが伝わることがあります。
他業種での例
飲食店なら、ピーク前の仕込みから閉店後の片づけまでを1本で。工場なら、作業着に着替えるところから持ち場での1日を。建設会社なら、朝礼と現場移動を含めて。運送会社なら、点呼から配送ルート、荷降ろしまで。
いずれも、映すのはすでに毎日やっていることです。撮影のために新しく用意するものはありません。スマートフォン1台と、社員1人の1日があれば成立します。
制作費をかけるほど良くなる打ち手ではない、という点も押さえておきたいところです。費用を積むと、その費用に見合う見栄えを求めたくなり、整えるほうへ引っ張られます。
その動画は、明日の自分を見せているか
応募が集まらないとき、動画の質が足りないと考えるのは自然です。実際、それで改善することもあります。
ただ、この会社が変えたのは質ではありませんでした。見栄えの良さを捨てて、現場をそのまま映した。それだけです。
自社の採用動画を見た人は、そこに自分が働いている姿を思い浮かべられるでしょうか。