職種名は、世の中に浸透した言葉でなくてもいい。何をやるのかが浮かぶ名前に変えて、採用応募数が4.2倍になった話
求人を出しても、応募が来ない。そう悩んでいる会社は少なくありません。
2023年10月に帝国データバンクが行った『人手不足に対する企業の動向調査』では、正社員の人手不足は企業全体で52.1%、非正社員の人手不足は企業全体の30.9%と報告されています。多くの企業が人手不足に悩まされており、「求人を出しても応募者が来ない」という企業も数多く存在しています。
応募が来ないとき、まず見直されるのは給与や休日です。ところが、ある事例で手を入れたのは、求人の一番上に書く職種名でした。
職種名を変えて、採用応募数が4.2倍になった

この事例では、何をやるのかがイメージできる職種名に変えたことで、採用応募数を4.2倍にすることができました。
職種名は、求人票の中でいちばん短い項目です。求人では「事務職」「営業職」のような、世の中に浸透している呼び方をよく見かけます。間違いではありません。ただ、その名前を読んだ求職者が、自分の働く姿を思い浮かべられるかどうかは別の話です。
商品名で売上が変わるなら、職種名で応募も変わる

「とんぺい焼き」では売れなかった
この考え方の下敷きになっているのは、商品名の話です。マーケティングに携わっている人なら、商品名が変わるだけで売上が大きく変わることを知っているはずです。
月刊コンサルタントで以前紹介された別の事例があります。とんぺい焼きという食べ物は、多くの人にとってよくわからないものです。そのため「とんぺい焼き」という商品名では、全然売れませんでした。
それを『朝採れ新鮮卵と厳選熟成肉を使った絶品とんぺい焼き』という商品名に変えたところ、多くの注文が入るようになり、とんぺい焼きの売り上げ比率を19%上げることができました。
よくわからない商品を、そのまま商品名にしない。どんな商品なのか、どんな価値があるのかがわかる名前に変える。それでお客さんが反応するようになった、ということです。同じことが求人にも言えます。
イメージできない仕事には、応募できない
元ネタは、採用で重要なことを「イメージの投影」と表現しています。
どんな仕事をやるのかがイメージできなければ、求職者の不安は消えません。「自分にこの仕事ができるだろうか?」「続けることができるだろうか?」。この不安が解消されないため、一歩を踏み出すことができず、応募が集まらない状態に陥ります。
逆に、どんなことをやるのかがイメージできれば、不安は解消されていきます。そして「この仕事なら自分にもできそう…」と感じられれば、応募する気にもなっていきます。
職種名は、自分で作っていい
ここで大事なのは、求人では世の中に浸透している職種名を必ず使わなければいけないわけではないという点です。造語の職種名を使うこともできます。
職種名を一般的な呼び方から外してもいい。そう考えるだけで、求人票の一行目は、仕事の中身を伝える場所に変わります。

その結果…
何をやるのかがイメージできる職種名に変えたことで、採用応募数は4.2倍になりました。
【独自考察】職種名は、求人の「見出し」である
最初に読まれる一行で、読むかどうかが決まる
求人を探す人が最初に目にするのは、多くの場合、職種名だと考えています。給与や仕事内容の説明は、その一行に興味を持った人しか読みません。
広告と同じで、見出しが読まれなければ本文は読まれないと考えています。職種名は、求人という広告の見出しにあたります。「事務職」と書くのは、とんぺい焼きを「とんぺい焼き」とだけ書いて売り場に並べるのに近いのではないでしょうか。

名前は、実態と一致していなければ逆効果になる
造語の職種名は自由に作れます。だからこそ、注意が要ると考えています。
元ネタの例にある「反響営業マン」は、問い合わせがあった会社に営業をする仕事だとわかる名前です。この名前で応募してきた人に、入社後に飛び込み営業を任せれば、名前が約束したことを会社が破ることになります。職種名は、仕事の中身についての約束です。実態と違う名前で応募を集めても、その先で不信を生むだけだと考えています。
反対に、言葉だけ華やかで中身が浮かばない名前も役に立ちません。ポイントは格好よさではなく、読んだ人が働く姿を思い浮かべられるかです。
名前がはっきりすると、合わない人も自分で外れる
何をやる仕事かが名前で伝わると、「自分にもできそう」と思う人が応募しやすくなります。同時に、その仕事を望まない人は、応募する前に自分で判断できます。
元ネタは応募数の変化だけを報告しており、入社後の定着までは書いていません。ただ、職種名で仕事の中身が伝わっていれば、入社してから「思っていた仕事と違う」と感じる人は減る方向に働くと考えています。
【応用編】自社の職種名を作り直す手順

元ネタが勧めているのは、何をやるのかがイメージできる職種名を造語で作ることです。示されている例を見てから、自社で考える順番を整理します。
元ネタの例1:事務職
「事務職」という職種名で求人を出しても、どんなことをやるのかはイメージできません。これを「業務支援コーディネーター」といった職種名にすると、働いている人の業務を手助けしていく仕事だとイメージできます。
元ネタの例2:営業職
「営業職」で求人を出すと、「もしかしたら飛び込み営業やテレアポなどをやらないといけないのかな」という不安を感じて、敬遠してしまう人もいるかもしれません。「反響営業マン」などの職種名にすれば、問い合わせがあった会社に反響営業をしていく仕事だとイメージできます。
自社で考えるときの3つの順番
ここからは弊社の考える進め方です。
1つ目は、その職種名を聞いた求職者が抱きそうな不安を書き出すことです。営業職なら飛び込みやテレアポ、というように、一般的な名前が連れてくる誤解を先に洗い出します。
2つ目は、実際の仕事のうち、その不安を打ち消す事実を1つ選ぶことです。反響営業マンの場合は「問い合わせがあった会社に営業する」がそれにあたります。実態として守れていることだけを選びます。
3つ目は、その事実が名前だけで伝わるかを、社外の人に聞いて確かめることです。社内では通じる言葉でも、求職者には通じないことがあります。説明なしで仕事の中身が浮かぶかどうかが基準です。
その職種名で、働く姿が浮かぶか
応募が来ないとき、条件を見直すのは自然な発想です。それも必要な打ち手です。
ただ、この事例で採用応募数を4.2倍にした理由として挙げられているのは、何をやるのかがイメージできる職種名に変えたことでした。とんぺい焼きが名前ひとつで注文を集めたように、仕事も名前ひとつで見え方が変わります。
自社の求人の一行目を読んだ人は、そこで自分が働いている姿を思い浮かべられるでしょうか。